2018年09月03日

司法書士による簡裁訴訟代理・訴状作成の依頼費用を調べる(名古屋周辺)


概要


愛知県内で少額訴訟および簡易裁判所通常訴訟での提訴を予定する人を想定して、司法書士への依頼に要する費用をウェブサイトから調査しました。検索エンジンからたどったページは計100件を超えますが報酬額が読み取れたものは17件しかなく、質・量ともに貧弱な情報しか公開されていないのが東京と比べたときの違いです。


調査方法


『司法書士 少額訴訟 名古屋』および『司法書士 通常訴訟 名古屋』を検索キーワードとし、googleで1位から50位までの検索結果に表示された司法書士のウェブサイトから、費用を表示するページを読み取りました。


発見できたデータが15件しかなかったため『司法書士 通常訴訟 名古屋 費用』でさらに1〜50位まで検索し、発見できたデータ2件を加えて17件を収集しました。


愛知県でない事務所所在地のウェブサイト、運営者が司法書士でないウェブサイト、当事務所のウェブサイトは調査対象から外しています。調査日は9月2日です。



注意


報酬額が読み取れたサンプルは17件あり、【1】〜【17】まで番号を付しました。番号は検索順位とは関係ありません。


各データとも、おそらく難易度が平均的(単純)な事案を想定しています。


特に労働紛争については単純な基本給未払い・解雇予告手当請求がこれに該当すると推測します。


賃金未払い(残業代請求を含まない請求)を想定して報酬体系を表示した司法書士事務所は、サンプルからは発見できませんでした。『給料未払い 司法書士 名古屋』を検索キーワードとして検索を試みましたが、検索順位30位までにはそうした事務所は発見できていません。


集計結果


1.少額訴訟の訴訟代理の着手金額(請求額は50万円を想定)

 4万円まで
  2件
 6万円まで
  4件(中央値)
 10万円まで
  2件
 請求額に対する料率
  1件
 着手金なし(完全成功報酬制)
  1件

 上記10件しか少額訴訟の訴訟代理に関する報酬の表示が読み取れるウェブサイトが存在していません。
そのうち7件が、少額訴訟と通常訴訟の着手金を区別していません。明示的に少額訴訟を想定して報酬額を区分しているウェブサイトは2件しかありませんでした。
 10件のうち9件で成功報酬が設定されています。
着手金を設定する8件では、成功報酬は10〜25%です。料率は15%を超えて20%まで3件、25%まで3件で、15〜25%の区間に弱いピークがあります。

 データの中央値は5万円です。

2.通常訴訟の訴訟代理の着手金額(請求額は100万円を想定)

 6万円まで
  6件(中央値)
 10万円まで
  1件
 10万円を超える
  2件
 請求額に対する料率
  2件
 着手金なし(完全成功報酬制)
  1件

 上記12件で、通常訴訟の訴訟代理に関する報酬の表示が読み取れました。
 12件のうち11件で成功報酬が設定されています。
着手金を設定する11件では、成功報酬は10〜25%です。料率は10%以上15%以下が3件、15%を超えて20%まで4件で、この区間に弱いピークがあります。

 データの中央値は5万円ですが、最大値が少額訴訟の10万円に対し15万円・17万円が各1件あり、データの分布が広がっています。

 着手金が請求額に比例して変化することが読み取れるのは1件のみです。このほか、単に着手金の最低額だけを示すものがあります。出廷一回あたりの日当を示す記載は見いだせませんでした。

3.少額訴訟の訴状作成(請求額は50万円、枚数4枚を想定)

 4万円まで
  2件
 6万円まで
  3件

 明示的に少額訴訟の訴状作成報酬を示したものは5件しかありません。上記のうち1件は報酬の最低額を示しており、1件は費用の目安を示すだけなので中央値を定めることもできません。

4.通常訴訟の訴状作成(請求額は100万円、枚数4枚を想定)

 4万円まで
  2件
 6万円まで
  5件
 10万円まで
  1件

 請求額を区別せず、書類作成1回3万円と表示するものが1件、書類作成枚数で報酬額を定めるものが1件ありました。


各サンプルごとのデータ

少額訴訟の訴訟代理

【4】着手金 10万円 成功報酬 18%+15000円

【7】着手金 80000円

【9】着手金 50000円 成功報酬 25% ※

【10】着手金 50000円 成功報酬 10%

【11】着手金 30000円 成功報酬 25% ※

【12】着手金 なし 成功報酬 35% ※

【13】着手金 50000円 成功報酬 20% ※

【14】着手金 請求額の8〜10% 成功報酬 16〜20% ※

【16】着手金 50000円 成功報酬 15% ※

【17】着手金 30000円 成功報酬 18% ※


通常訴訟の訴訟代理

【2】着手金 50000円から 成功報酬 15%から

【3】着手金 10万円 成功報酬 10%

【4】着手金 17万円 成功報酬 15%+30000円

【7】着手金 15万円

【9】着手金 50000円 成功報酬 25% ※

【10】着手金 請求額の8% 成功報酬 16%

【11】着手金 30000円 成功報酬 25% ※

【12】着手金 なし 成功報酬 35% ※

【13】着手金 50000円 成功報酬 20% ※

【14】着手金 請求額の8〜10% 成功報酬 16〜20% ※

【16】着手金 50000円 成功報酬 15% ※

【17】着手金 30000円 成功報酬 18% ※


訴状作成(訴訟代理をせず、訴状のみ作成する)

少額訴訟は請求額50万円、通常訴訟は100万円を想定 準備書面は1件あたりの報酬

【1】通常訴訟 3万円 準備書面 3万円

【3】その他の裁判書類作成 3万円(このデータでは、訴状・準備書面が『その他〜』に該当する)

【4】通常訴訟 5万円

【5】通常訴訟 5万円から

【6】通常訴訟 5万〜7万円

【7】少額訴訟 6万円 通常訴訟 10万円

【8】通常訴訟 5万円

【9】1万5千円に1ページあたり4500円を加えた金額(少額訴訟・通常訴訟を区別しない)

【10】少額訴訟 5万円から 通常訴訟 請求額の8%(最低6万円)

【14】少額訴訟 2万〜5万円程度 地裁通常訴訟は請求額の8〜10%

【15】少額訴訟 5万円 通常訴訟 5万円



posted by 代書やさんと、そのアシスタント at 16:38| Comment(0) | TrackBack(0) | 探す・調べる

2018年08月26日

司法書士による簡裁訴訟代理・訴状作成の依頼費用を調べる(東京周辺)

概要

東京都内で少額訴訟および簡易裁判所通常訴訟での提訴を予定する人を想定して、司法書士への依頼に要する費用をウェブサイトから調査しました。


調査方法

『司法書士 少額訴訟 東京』および『司法書士 通常訴訟 東京』を検索キーワードとし、googleで1位から50位までの検索結果に表示された司法書士のウェブサイトから、費用を表示するページを読み取りました。
東京・千葉・埼玉・神奈川を除く事務所所在地のウェブサイト、運営者が司法書士でないウェブサイトは調査対象から外しています。調査日は8月26日です。

注意

報酬額が読み取れたサンプルは21件あり、【1】〜【21】まで番号を付しました。番号は検索順位とは関係ありません。
各データとも、おそらく難易度が平均的(単純)な事案を想定しています。
特に労働紛争については単純な基本給未払い・解雇予告手当請求がこれに該当すると推測します。
賃金未払い(残業代請求を含まない請求)を想定して報酬体系を表示した司法書士事務所は、サンプルからは発見できませんでした。『給料未払い 司法書士 東京』を検索キーワードとして検索を試みましたが、検索順位30位までにはそうした事務所は発見できていません。

異常値

着手金を一律で5千円・成功報酬を1万円とするもの【17】がありました。
この1件は同じ事務所内の他の業務の報酬と比較し異常な表示と考え、集計から外しました。

集計結果


1.少額訴訟の訴訟代理の着手金額(請求額は50万円を想定)

 4万円まで
  2件
 6万円まで
  8件【中央値】
 10万円まで
  6件
 請求額に対する料率
  1件
 着手金なし(完全成功報酬制)
  2件
 上記合計19件のうち1件を除いて、着手金のほかに成功報酬が設定されています。
 完全成功報酬制の2件では、成功報酬は20〜30%です。
 着手金を設定する16件では、成功報酬の料率は10〜20%ですが、10〜15%が13件と大部分を占めています。
 データの中央値は6万円です。

2.通常訴訟の訴訟代理の着手金額(請求額100万円を想定)

 6万円まで
  2件
 10万円まで
  11件【中央値】
 10万円を超える
  2件
 請求額に対する料率
  1件
 着手金なし(完全成功報酬制)
  2件
 上記合計18件のうち1件を除いて、着手金のほかに成功報酬が設定されています。
 完全成功報酬制の2件では、成功報酬は20〜30%です。
 着手金を設定する16件では、成功報酬の料率は10〜20%ですが、10〜15%が13件と大部分を占めています。
 データの中央値は9万8千円です。

 着手金が請求額に比例して変化するものは少額訴訟で1件、通常訴訟では2件しかありません。通常訴訟2件のうち1件は10万円に請求額の6%を加えるもので、最低額は常に10万円を超えます。
 訴訟代理の着手金を請求額と無関係に一定額とする事務所が大部分を占めることは弁護士の報酬体系と比べて異なる点ですが、これは事実上、低額な請求で着手金の最低額の設定として機能していると考えられます。
 出廷1回ごとに1万円の日当を定めるものが2件ありました。

3.少額訴訟の訴状作成(請求額50万円を想定)

 4万円まで
  7件【中央値】
 6万円まで
  3件
 10万円まで
  2件
 請求額に対する料率
  1件

報酬額として、『4万円〜』などの表示で最低額のみを示すデータが6件あります。特に4万円までの階層に3件含まれるため、実際には4万円までの費用におさまらない可能性があります。
これを無視した見かけ上の中央値は4万円です。
実現した請求額に対する成功報酬を定めるものが1件あります。

4.通常訴訟の訴状作成(請求額100万円を想定)

 4万円まで
  2件
 6万円まで
  3件【中央値】
 10万円まで
  2件
 10万円を超える
  1件

報酬額として最低額のみを示すデータは2件あり、いずれも4万円までの階層で出現しています。
中央値は5万円です。
少額訴訟の報酬を示すものの、通常訴訟の報酬額を公開しない事務所が複数あります。
このためウェブからデータ収集できた件数は8件と最少です。

少額訴訟・通常訴訟共通で、1回あたり1〜4万円の準備書面作成報酬を定めるもの6件、裁判所への同行について1回1万円の日当を定めるものが1件ありました。

各サンプルごとのデータ

少額訴訟の訴訟代理

【1】着手金 63000円 成功報酬 20%

【2】【7】【16】【21】

   着手金 60000円 成功報酬 10%

【3】着手金 98000円から 成功報酬 表示なし

【4】【12】

   着手金 10万円 成功報酬 15%

【5】着手金 95000円 成功報酬 18%

【6】着手金 75000円 成功報酬 12%

【8】着手金 40000円 成功報酬 10%

【9】【11】【14】【20】

   着手金 50000円 成功報酬 10%

【10】着手金 請求額の10% 成功報酬 15%

【13】着手金 なし 成功報酬 20%

【15】着手金 28000円 成功報酬 17%

【17】着手金 5000円 成功報酬 1万円 ※異常値として除外

【18】着手金 なし 成功報酬 30%


通常訴訟の訴訟代理

【1】着手金 84000円 成功報酬 20%

【2】【7】【16】着手金 10万円 成功報酬 10%

【3】着手金 98000円から 成功報酬 表示なし

【4】着手金 15万円 成功報酬 15%

【5】着手金 95000円 成功報酬 18%

【6】着手金 10万円+請求額の6% 成功報酬 12%

【8】着手金 40000円 成功報酬 10%

【9】着手金 50000円 成功報酬 10%

【10】着手金 請求額の8% 成功報酬 15%

【12】着手金 10万円 成功報酬 15%

【13】着手金 なし 成功報酬 20%

【14】【21】

    着手金 80000円 成功報酬 10%

【15】着手金 67000円 成功報酬 20%

【17】着手金 5000円 成功報酬 10000円 ※異常値として除外

【18】着手金 なし 成功報酬 30%

【20】着手金 最大10万円 成功報酬 10%


訴状作成(訴訟代理をせず、書類のみ作成する)

少額訴訟は請求額50万円、通常訴訟は100万円を想定 準備書面は1件あたりの報酬

【1】 少額訴訟 4万円 通常訴訟 5万円 準備書面 3万円(準備書面は請求額30万円の場合)

【2】 少額訴訟 4万円 通常訴訟 5万円 準備書面 2万円

【5】 少額訴訟 8万円 準備書面 3万円から

【6】 少額訴訟 75000円+成功報酬12% 通常訴訟 16万円+成功報酬12%

【7】 少額訴訟 4万円 通常訴訟 5万円 準備書面 2万円

【8】 少額訴訟 4万円

【10】少額訴訟 3万円から 通常訴訟 3万円から

【12】少額訴訟 請求額の4% 裁判所への同行1回につき 1万円

【14】少額訴訟 5万円 通常訴訟 8万円 準備書面 左記の半額

【15】少額訴訟 3万円 準備書面 2万円

【16】少額訴訟 6万円 通常訴訟 7万円

【19】少額訴訟 6万円から

【20】少額訴訟 25000円から 通常訴訟 25000円から

posted by 代書やさんと、そのアシスタント at 17:21| Comment(0) | TrackBack(0) | 探す・調べる

2016年10月30日

名古屋簡裁・地裁・高裁 労働事件に関する開廷表調査(第8次)4週間目

当事務所では例年10月に、名古屋簡易・地方・高等裁判所の開廷表を調査して労働関係訴訟の事件数の推移を調べています。
今年は10月3〜31日を調査期間としました。
これは10月24〜28日に調査した、名古屋地裁民事第1部(労働事件の集中部)および名古屋簡裁・名古屋高裁における労働関係事件の事件数です。

調査の方法は10月8日の記事で説明しています。

事件名の傾向と事件数は、つぎのとおりです。

簡裁
 未払賃金等 3件(通常訴訟1件 少額訴訟2件)

地裁
 地位確認 1件
 損害賠償 2件(企業を被告とするもの・労働者を被告とするもの各1件)
 退職金  1件

高裁
 地位確認 2件
 慰謝料・その他 1件

特記事項
 地裁・高裁7件のうち
 労働者側に代理人がいないもの 2件
 企業側に代理人がいないもの  1件
 双方に代理人がいるもの    4件
タグ:本人訴訟
posted by 代書やさんと、そのアシスタント at 16:54| Comment(0) | TrackBack(0) | 探す・調べる