訴訟の心得という題名。
本人訴訟を目指す方が思わず飛びつきそうになりますが、残念ながら内容は企業の法務担当者と実務家としての弁護士向けです。本書のはしがきでも、冒頭からそう述べられています。
つまり、法的な素養や経験があり、訴訟活動でも抑制的に(思い入れ無く)振る舞うことが期待されている『仕事として訴訟に関与する人達』向けに期日間の打ち合わせや書面の準備の仕方を解説した書籍なのです。想定している訴訟も、ある程度しっかりした法務部がある大企業対大企業、あるいは大企業対個人でも株主代表訴訟などを想定しているように感じられます。
しかし、さらに内容を読み進めると本人訴訟当事者にも参考になる面が多々あります。同書の各所に指摘されている、『やってはならない・好ましくないこと』をしないようにするだけでも、だいぶ立ち居振る舞いが洗練されることになるでしょう。
第5章の証人尋問には約50ページが割かれており、本人訴訟当事者が他者を尋問する場合の準備について大変参考になります。
- あれもこれもだらだらと訴状に書きたくなってしまったり(書けば裁判所が読んでくれると思っていたり)、
- 準備書面で相手を中傷してみたくなったり(または、相手からそうされたり)、
- 嘘つきな敵対当事者に反対尋問で反撃できる(正義は勝てる)などと根拠無く信じているようなら、
まずは落ちついてこの本を読んでみてください。
ところで、この本に書かれている訴訟代理人のレベルの高さに絶望する必要はありません。
どうしようもない中小零細企業対個人の訴訟ばかり扱っている筆者の見るところでは、この本に書かれていることがきっちり実践できてる代理人に会ったことは片手で数えられるしかない、と申し添えます。
同書の『楽しい訴訟−結びにかえて−』の最後に出てくるような『戦(いくさ)系の弁護士』に貴方が出会うことはまずない、そう安心していただいてかまいません。
仮に出会ってしまっても、あなたの主張と証拠が適切ならばさっさとスジを見切って和解案を投げてくるでしょう。
もし不当な訴訟を起こしてしまっていたなら、もって瞑すべし、ということになりますが。
著者 中村直人 著.
出版者 中央経済社, 2015.2.
ISBN 978-4-502-13451-7 :