当事務所では登記の本人申請や本人訴訟を考えている人のために、書類作成に関する相談の一環として作成書類の添削のほか、裁判例の調査・参考文献の紹介などのリファレンスサービスを行っています。
これから紹介するのは、文献調査の事例です。
- 問い合わせの内容 :労働審判手続申立書を自分で作成して本人申立するときの参考文献を紹介してほしい
- 相談者の所在 :沖縄県(沖縄本島中部)
この問い合わせで検討されている労働審判手続は、申し立ての類型としては一般的なものでした。しかし、市立図書館で入手可能な参考文献が初心者向けの解説書に限られいて、申立書で事案に即した具体的記載をするには不足が感じられる状況です。また、申立書の作成から期日への対応までを自分で行うため、期日の進行その他の制度についても解説されている文献が欲しいところです。
沖縄県の公立図書館でも、蔵書の横断検索システムが導入されています。
このシステムを使って、大学図書館まで含めた検索を行いました。
沖縄自動車道沿線の各市立図書館での蔵書状況をみると、『手軽に使える労働審判制度』(君和田伸仁 2007年)が何カ所かの図書館に所蔵されていますが、これは初心者向けです。論点に応じた細かい記載の参考にはなりません。また、証拠書類を多数提出するので証拠説明書の添付を必須とします。証拠説明書の書式は別の参考書で見てもらう必要があります。
意外でしたが、県庁所在地である那覇市立図書館では『労働審判』を件名にもつ書籍の所蔵が一件しかありませんでした。
県立図書館と大学図書館を探した結果、沖縄県立図書館では、『新労働事件実務マニュアル』(東京弁護士会労働法制特別委員会 2014年)が見つかりました。
これは、労働審判手続きを含む労働紛争解決のための裁判手続きについて解説をしています。書式も出ていますので、まずこれを推奨することとしました。
証拠説明書については、『民事訴訟書式体系』(梶村太市 2007年)を勧めることとしました。
これは主に、地方裁判所の通常訴訟を前提に訴状などの書式を解説するものですが、付属書類としての証拠説明書の様式も載っています。
出版年は古いのですが、制度上の解説書として『詳解労働審判法』(清田富士夫 2007年)も勧めることとします。こちらにも労働審判手続申立書の書式が載っています。以上の3点を推薦しました。
大都市を持たない県では、大学図書館・県立図書館まで含めても有用な図書の入手が難しいという事例です。東海地方の公立図書館のように、県を越えての蔵書の相互貸借制度があるならば利用も検討すべきですが、即時に入手できるものではありません。