弁護士向けの書籍です。
最近、こうした調停や訴訟、審判の期日の様子をよく説明してくれている書籍がさまざまな申立・紛争類型について出版されるようになりました。本人申立を試みる人にはいい時代になったものですが、ひょっとしたら司法修習やその後のOJTが貧弱になってきたからこうした書物の需要が高まった、ということなのかもしれませんね。
相続でこうした狙いを持っている本としては『税理士があまり知らない相続紛争と遺産分割調停』をすでにご紹介しています。弁護士ではない人=税理士に向けて書かれたその本よりもこちらのほうが素人向けではない印象です。一見してわかりやすいという印象は与えない本ですが、説明は丁寧なので本人申立希望者の方は諦めずにお読み頂きたいです。
この本は相続を巡る諸手続について、弁護士を中心人物として依頼人・相手方・家庭裁判所の調停の期日などでなされるやりとりを詳しく説明しています。本人申立を企図する方々には35ページまでの一般的な説明のほか、36ページ以降の第2編で家事調停の期日でのやりとりや申立書の書式のうち、具体的な(といっても、この本で想定した事例に則して具体的、ということですが)記載の例をご自分の興味がある事件について参考にしていただけるはずです。
本書で取り上げられているのは、遺産分割調停・審判、遺留物減殺請求訴訟、このほか手続きや申立について説明があるのは裁判外での遺産分割協議、遺言の執行、相続財産管理人の選任、相続した株式の売渡請求(商事非訟手続)です。最後の『相続クーデター』はちょっと儲かっている中小零細企業のおやじの相続人ならどこでも発生してしまいそうで、実務家としてはこの辺が興味深いかもしれません。
この『事例に学ぶ』シリーズ、本書は平成27年春に出ました。他には離婚事件、保全・執行(仮差し押さえや差し押さえ)、建物明渡といった分野の本があり、これらもいずれ紹介したいと思っています。