2015年11月29日

事例に学ぶ相続事件入門 : 事件対応の思考と実務

【本人申立当事者・実務家向】
【推奨度:☆☆】

弁護士向けの書籍です。

最近、こうした調停や訴訟、審判の期日の様子をよく説明してくれている書籍がさまざまな申立・紛争類型について出版されるようになりました。本人申立を試みる人にはいい時代になったものですが、ひょっとしたら司法修習やその後のOJTが貧弱になってきたからこうした書物の需要が高まった、ということなのかもしれませんね。

相続でこうした狙いを持っている本としては『税理士があまり知らない相続紛争と遺産分割調停』をすでにご紹介しています。弁護士ではない人=税理士に向けて書かれたその本よりもこちらのほうが素人向けではない印象です。一見してわかりやすいという印象は与えない本ですが、説明は丁寧なので本人申立希望者の方は諦めずにお読み頂きたいです。

この本は相続を巡る諸手続について、弁護士を中心人物として依頼人・相手方・家庭裁判所の調停の期日などでなされるやりとりを詳しく説明しています。本人申立を企図する方々には35ページまでの一般的な説明のほか、36ページ以降の第2編で家事調停の期日でのやりとりや申立書の書式のうち、具体的な(といっても、この本で想定した事例に則して具体的、ということですが)記載の例をご自分の興味がある事件について参考にしていただけるはずです。

本書で取り上げられているのは、遺産分割調停・審判、遺留物減殺請求訴訟、このほか手続きや申立について説明があるのは裁判外での遺産分割協議、遺言の執行、相続財産管理人の選任、相続した株式の売渡請求(商事非訟手続)です。最後の『相続クーデター』はちょっと儲かっている中小零細企業のおやじの相続人ならどこでも発生してしまいそうで、実務家としてはこの辺が興味深いかもしれません。

この『事例に学ぶ』シリーズ、本書は平成27年春に出ました。他には離婚事件、保全・執行(仮差し押さえや差し押さえ)、建物明渡といった分野の本があり、これらもいずれ紹介したいと思っています。

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2015年05月26日

節税が破産を招く相続税対策の落とし穴 : 地主の相続対策

【初心者向】
【推奨度:☆】

市街地から近郊に、ちょっとした土地と小金を持っている。
相続対策やら年金対策と言われてお金を借りて、ありがちな土地活用=アパート経営に乗り出してみる。
そして数年後、「破産」する。

そんな田舎の地主にありがちな破局を避けるために一読していただきたい一冊です。
なんの芸もない大手ハウスメーカーや不動産業者の営業担当者がご実家におしかけて来ている、そんな親を抱えたお子さん達がまず読むべきかもしれません。
著者の主張は明快です。節税は賢明な相続対策をとった結果としてもたらされる余録であって、最優先で取り組むべき目標ではないのだと説きます。さらに、税理士やコンサル業者にも相続対策に通じた人は本当は多くなく、相談先は慎重に選ぶべきだ、ということが示されています。

この本が恐ろしいのは、実は賃貸経営に乗り出したあとに読んでも間に合わないのかもしれない、ということでしょうか。資金ショートに陥らないうちに手じまいできればいい、ということなのかもしれないと思えてきます。
書誌情報
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2015年05月17日

税理士があまり知らない相続紛争と遺産分割調停 : 実務イメージをストーリーで理解する

【本人申立当事者・実務家向】
【推奨度:☆☆】

表紙をよくみてみましょう。
左が家庭裁判所の調停室、右は審判廷内のイラストなんです。

この表紙が象徴している同書の特徴は、「弁護士以外の人に対して、家庭裁判所の遺産分割調停等の手続きがどのように進んでいくかを詳しく説明してくれていること」にあります。
書名からは本書は税理士さんむけに書かれているものの、家裁の調停室や待合室がどうなっているか、調停委員からどんなことを言われるか、をこの本を指し示してお客さまに説明ができる、と言う点では、実務家としても使えるよい本です。

税理士兼弁護士が著者であるこの本は、顧問先社長の相続紛争を弁護士に相談する税理士、という二人の主人公と一つの相続事件を中心に書き進められていきます。
相続発生→相続放棄の検討→遺産分割協議の決裂→遺言の発見→遺留分減殺請求→遺産分割調停、と関連する書類が示されますが、書式集としてこの本を見ることはできません。手続きの段階ごとに関係者間に飛び交う書類のサンプル、と割り切ったほうがいいでしょう。

このブログでは遺産分割協議に限らず、本人申立を試みる人に「実際の裁判手続きの期日が、どのように進むのか」が詳しい本を探索しておすすめしていますが、この本は遺産相続をめぐる家事調停・家事審判の分野でおすすめできる一冊です。
書誌情報
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2015年05月15日

相続があぶない! : 「教育資金贈与」は今春が最大のチャンス!

【初心者向】
【推奨度:☆】

「相続 危ない(あぶない)」という題名を含むものとしては平成23年以降、少なくとも7点の書籍が出版されています。
別冊宝島のシリーズはここ数年、毎年のようにこの題名で本が出ているのはかえって微笑ましいものがあります。
本書は平成26年に出た一冊で、あぶないと注意喚起するのは主に相続税対策の分野です。

雑誌のような大きさと寸法で、ちょっと気を引くトピックスや失敗例と関連する基礎知識、企業広告、そうした構成ですが、別に紹介する「知らないと損をする相続&贈与の落とし穴」は相続税ではなく相続紛争対策に解説の重点をおいていて、実は中身に結構違いがあります。

表紙と目次に引かれてつい購入したくなりますが、うっかりすると自分には役に立たないほうを買っている、ということになりかねません。自分にぴったりの記事があるなら買ってもよいでしょうか。
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タグ:相続 遺言 贈与
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2015年05月10日

家族内ドロボー : 相続でバレる大問題

【初心者・実務家向】
【推奨度:☆☆】

親の預金を勝手に引き出す子。
夫の土地をこっそり売却する妻。

著者、名付けて曰く「家族内ドロボー」。

題名も内容もわかりやすく、ショッキングです。
主に相続をきっかけに発覚する、親族内相互間での財産の窃盗・横領・不動産名義変更、というより侵奪がいかにして可能であり、どのような形態でなされるのか、が詳細に説明されています。
弁護士である著者によれば、平成17年になされた不動産登記法の改正も郵送申請などでかえって不正な登記申請がしやすくなった、とバッサリ叩ききられています。
相続相談にたずさわる個々の実務家達がときおりみかける問題事例の熱心な体系化という点でとても興味深く、読み物としてもわかりやすく読める良書です。

これは不動産登記の本でもあると思うのは、家族内ドロボーの形態には所有権移転登記(土地建物の名義変更)や抵当権設定登記(不動産を担保に入れてお金を借りる登記)が関連するものもあり、最近徐々に検索が増えつつある不動産登記本人申請は、ひょっとしたら家族内ドロボーとして計画実行されているかもしれないからです。

『名義を変える』ということは…に戻る(不動産の名義変更を自分でする人の方への情報提供)

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